多変数の関数を,「1つの変数以外をすべて定数と見て,その1つの変数で微分する」ことを,偏微分と呼びます.例えば,2変数の関数f(x,y)があるとき,
f(x,y)をxで偏微分:
f(x,y)をyで偏微分:
となります.
f(x,y)が左図のグレーの部分のような形(スノーボード競技のハーフパイプを想像してください)のとき,fx(x,y)とfy(x,y)は(x,y)でのそれぞれ青色,緑色の方向の傾きになります.
z = xy をx, yで偏微分すると,
zx = yxy-1 (yを定数と見る)
zy = xylogx (xを定数と見る)
z = logyx をx, yで偏微分せよ.
底をeに変換すると,
であるから,
1変数関数f(・)について,「f(x)がxで微分可能である」とは,Aを定数として
と書けることを言います.同じことを
「がどんな小さなΔxについても成り立つ」
と書くことができます.ただし,q(・)は
となる関数です.つまり,q(Δx)は「Δxが0に近づくとき,Δxよりも速く0に近づく」関数です.このような関数を「o(Δx)」と書くこともあります.
これと同様に,
「が,どんな小さなΔx, Δyについても成り立つ」
とき,「f(x, y)は全微分可能である」といいます.ただし,q(・)は
となる関数,つまりです.
「偏微分可能」であることは,x方向あるいはy方向についてのみ微分可能であることしか示していません.しかし,「全微分可能」であることは,Δx, Δyの比率は自由ですから「どの方向にも微分できる」ことを示しています.
さて,ここでΔy =0とおくと
ですから,fx(x,y) = Aとなります.同様に,Δx =0とおくと,fy(x,y) = Bとなります.よって,となります.ここで,(Δx, Δy)→(0, 0)のときとなるので,Δx, Δyが非常に小さいときこれをdx, dyと書くと,
と書くことができます.ここで,f(x+dx, y+dy) - f(x,y)は,xがdxだけ,yがdyだけ微少に変化したときのfの変化量で,これをdf(x, y)と書いて,
をf(x, y)の全微分と言います.
ふたたび「ハーフパイプ」を考えてみます.dx=0の場合,dy=0の場合,dx=dyの場合,dy=2dxの場合など,dxとdyがいろいろな比率をとるとき,dfは全微分によってそれぞれ求まります.
長軸の長さ2a,短軸の長さ2bの楕円の面積をSとする.a, bの測定誤差がそれぞれda, dbの時,Sの誤差はいくらか.
与えられた楕円の面積Sは
である.ここで,Sをa, bで偏微分すると
となる.求めるSの誤差は,Sの全微分dSで,
となる.