基礎数学演習I 線形代数学(6)
行列の基本変形と逆行列


行列の基本変形

 行列の基本変形とは,

  1. 1つの行を何倍かする
  2. 2つの行を入れかえる
  3. 1つの行に他の行の何倍かを加える

の3つの操作をさします.基本変形の意味を,連立方程式を解く作業とならべて考えてみましょう.次の方程式を考えます.

これに対応する行列として,次の行列を考えます.

以下,方程式を解く手順と,それに対応する基本変形をならべます((1)(2)(3)はそれぞれ第1,2,3行を表します.「(1)←(1)+(2)×2」は「第2行の2倍を第1行に加える」と読んでください.

このように方程式を変形すると,z, y, xの順に解が求まります.このように,基本変形は対応する連立方程式の解を変えない変形のことです.これに対応する行列の方を見ると,下左側に0が集まっています.このような行列を階段行列とよび,段の数を階数(ランク)と呼びます.行列の階数は,基本変形によって変化しません.また,行列Aの階数をrankAで表します.

さて,上の変形で方程式の係数部分を表す行列を見ると,

からのように変形されています.この行列の階数は3で,行列の次数と同じです.このとき,この行列は正則で,この行列によって3次元空間中のある点は別の1点に写像されます.

これに対し,のように階数<次数の場合は,この行列は正則ではなく,点から点への1対1写像になりません.また,これによって決められる方程式は不定解や不能解になります.




基本変形と逆行列

 最初の例にあげたからへの変形の続きを行い,右上部分も0にしてみましょう.

このように,正則な行列は基本変形によって単位行列Eに変形することができます.

ところで,3つの基本変形は,いずれもある正則な行列をかける操作で表現することができます(教科書参照).そこで,元の行列AからEまでの変形を,それらの行列の積であらわし,それをPとすると,PA=Eと表せます.したがって,P=A-1になります.

A-1=E=PEで,PEとはすなわち「EにPで表される基本変形を施したもの」ですから,「AをEに変形する基本変形と同じ基本変形をEに施すと,A-1に変形される」ことがわかります.





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