教養ゼミ2002(総合科学部・浅野担当)
前へ    日程へ    次へ

7月22日 発表者:岡田 佳代子
もし月がなかったら

設定 
月の形成についての学説としては、火星ほどの微惑星と地球との衝突の際に、地球の一部が宇宙空間に投げ出され、それが引力によりお互いをひきつけた結果形成されたとする説が,現在最も有力となっています。ここでの設定としては、微惑星との衝突は起こらなかったものとしますが、衝突の結果として地球にもたらされたとされる地球の自転と公転軌道の変化、および大きさ、科学的組成、太陽をめぐる起道などは現在の地球と同じであると仮定します。また,その「月のない地球」には,人類と同じような知的生命体が存在するとします。
考察1:一日が八時間になる 
月のない地球にも太陽による潮汐がありますが、太陽の引力による潮汐は現在の地球のものの三分の一程度で、また、一年じゅう常に一定です。潮汐による海水の運動は大陸を押し、海底をこする海水による摩擦力は地球の自転を遅くする働きをするのですが、月がなければその運動も小さくなるため自転は現在ほど遅くなりません。地球の一日は,微惑星の衝突前は6時間でしたが,月の引力のおかげで24時間まで引き伸ばされました。しかし,月のない地球は,太陽による小さな潮汐で,一日は8時間、一年は1095日となります。そして昼の時間は3〜5時間になってしまいます。
    1. 日照時間の短縮→ビタミンDがあまりつくれない→体内でビタミンDをつくれる生物が繁栄する
    2. 光合成があまりできない→エネルギー効率のよい植物が有利
    3. 昼だけでは生命活動が維持できずに暗いところでも見えるように目が発達するのでは(現在の動物は食事などの基本的な生命活動だけで昼の4〜5時間使っているため)
    4. 寿命が短くなる
考察2:風が強くなる 
地球より自転の速い木星や土星がそうであるように、月のない地球でも強力でしつこい風がふくようになり、嵐も頻繁に発生し、ハリケーンは時速300キロメートル以上に達すると推定されています。
  1. 背の高い動植物は不利→全体的に動植物は小さくなる
  2. 地を這うような植物が多くなる

聴衆の意見:このような条件下で人類のような生物がいるとしたらどのような身体的特徴、社会の仕組み、生活形態などをしているか? 

    1. 強力な風により音声による意志の伝達が成立しなくなり、人類は話すということの代わりに脳から電波を出して何かテレパシーのようなものを発達させる
    2. (1年の日数が多くなると)就職が2,3倍になる
    3. 睡眠時間が短縮,もしくは2,3日で1サイクルとなる人間が現れる
    4. 光熱費が高くつく
参考文献 

浅野の感想

 月がないことの効果のうち,自転が速くなることにのみ着目して話が進みましたが,「潮汐が激減する」ということ自体の,自然や社会への影響についての話もあると,さらにおもしろかったと思います.また,発表のしかたとして,文献から得た知識と,自分で仮定から導いた内容をきちんとわけて説明して欲しかったと思います.
 なお,[ハリケーンの速さが速くなるだけで,強さは変わらないのでは?]といいましたが,これは誤りでした.台風の渦をつくる風を起こす力は,地球の自転による慣性力(コリオリの力)ですから,自転が速くなれば風は強くなります.ただ,昼夜が頻繁に交代し,海が連続して暖められる時間が短くなることによって,海から上がってくる水蒸気量が減ることはあるかもしれません.