教養ゼミ2002(総合科学部・浅野担当)
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7月22日 発表者:加藤 宏尚
もし犯罪のほとんどない世界があるとしたら,それはどんな世界だろうか

設定 
犯罪を防ぐことが最優先の世界を想定する.
 
はじめに 
今回も前回同様なかなかテーマが決まらず、図書館をさまよっていたらふと前に読んだ小説の「クライムゼロ」が目に留まり,これから着想を得ました。犯罪については、犯罪学という学問が「犯罪とは何かそしてそれをどうやって解決するか」ということを研究し続けているぐらいなので,一概に何かとは言えません。
(はじめに少し注意しておきたいこと)設定で言ったことで,みなさんを「なぜ犯罪がない世界なのに犯罪を防ぐことが必要なのか」と混乱させてしまったかもしれません。犯罪のほとんどない世界があるとしたら,そこでは必ず人為的に犯罪を防ぐ策がとられている,と私が思ったので,設定で「犯罪を防ぐことがこの仮定の世界で行われている」といいました。そして,この仮定の世界は今の世界の延長線上にあるものとして考えたわけで、講義中は主に、犯罪を防ぐ対策、仮定の世界ではどのような対策がとられているかを可能な限り考えてみました。
考察 
この世界で起こっていること(対策)について犯罪の要因である3つの項目に分け論じます。
 
犯罪の要因
 1 社会背景面
 2 食生活(栄養)面
 3 遺伝子面
ここからは、ある事実があって=>その原因を防ぐために仮定の世界で為されているであろうこと(対策)、という形で説明します。=>記号の意味は,「原因=>起こること」です.
1 社会背景面
まず犯罪大国であり、それゆえ犯罪についての研究がよく進んでいるアメリカについての話:
2 食生活(栄養)面
3 遺伝子面
この世界について
「犯罪は我々の社会において潤滑剤の役目を果たしている」とデュルケームが言っている。=>上の仮定の世界では社会が正常に機能しないのか?
(聴衆からの意見)・犯罪に気づくために犯罪はある.・警察や法廷はなくなってしまっているだろう.
(浅野先生の意見)犯罪の役目である「潤滑剤」というのは,今の社会においてやむをえず発生している軋みのようなもの。今の社会のモデルでは,犯罪やその他しょうがなく起きている問題がなくなるのは難しい.社会における様々なシステムを考えるとき,予め軋みが発生しないようなものを考えることができるほど,人はまだ頭がよくない。

参考文献 

発表者の感想

 講義中も多くの時間をさいた「犯罪を防ぐためにこの世界で起こっていること」だけではなく,難しい内容だとは思うのですが、先生の意見のような「犯罪が無くなったら,犯罪には直接関係しないどんなことに影響を及ぼすか、そして犯罪がなくなることで社会において正常に機能しないものがあるとしたら,それはどんなものか」ということをみんなで考えればよかったと思います。
 それから、ゼミのあとに,実際に今の世界でも犯罪の起こらない所があるのではないのか,といわれてはっとしました。私は,自然発生的に犯罪が無い世界などないと思う,といいましたが,いろいろな文化を検討すればあるのかもしれない(私もそういう所があると聞いたことはあるのですが,犯罪というものの範囲は文化によって違うので,こちらから見て犯罪が起きていなくても,相手の世界では犯罪が起こっているかもしれないから,犯罪が無い世界が本当にあるのかどうかわからない)と思いました.そういう世界があったら,なぜ犯罪が起こらないのか,それを知りたいと思います。    

浅野の感想

 「とにかく,犯罪をなくすことだけを最優先にする」という非現実的な社会を仮定し,その結果生じる軋轢について考えるというのは,このゼミの趣旨にも沿っていて,よいものだと思います.「犯罪をなくす」ということは概ね正しいことですが,それ「だけ」をつきつめると,発表者が考えたように,いろいろおかしなことが起こります.これは,「犯罪をなくすことだけを考える」というモデルが現実に合っていないことを示しています.では,どう妥協すればよいでしょうか.それが,社会のありかたを考えることだと思います.ただ,今回の発表では,発表者の考えを話すのに時間がかかりすぎて,聴衆の意見を聞く時間があまりなかったのが惜しまれます.