Lagrangeの未定乗数法は,条件付き極値問題を解く方法の1つです.条件付き極値問題とは,
「F(x,y) =0を満たすx,yの範囲で,f(x,y)の極値を求める」
という問題です.Lagrangeの未定乗数法が導く定理については,どの教科書にも説明がありますので,ここではこの定理に至るまでの考え方を説明しましょう.
上の条件付き極値問題において,
g(x,y,λ) = f(x, y) - λF(x,y)
とおきます.(x,y)がF(x,y)=0を満たしているかぎりg(x,y,λ)=f(x,y)ですから,
(x,y)=(a,b)のとき,F(x,y)=0の条件下でf(x,y)が極値をとるとすれば,
g(x,y,λ)も極値をとる (★)
と考えられます.これは,f(x,y)についての条件付き極値問題を,g(x,y,λ)についての条件なしの極値問題に置き換えたことになります.
ある関数が極値をとるとき,その関数の各変数についての偏微分は0ですから(注意:先々週の講義で説明したように逆は成り立ちません),
gx(a,b,λ)=0 (1)
gy(a,b,λ)=0 (2)
gλ(a,b,λ)=0 (3)
が成り立ちます.
(1)から fx(a,b) - λFx(a,b) = 0
(2)から fy(a,b) - λFy(a,b) = 0
(3)から F(a,b) = 0 (★★)
が得られます(ただし,f(x,y)もF(x,y)もC1級とします).これをa,b,λについて解くと,極値を与える点の候補(a,b)が得られます.この方法で得られる(a,b)はあくまで候補であって,それらのうちどれが本当の極値を与えるのかは別の方法で吟味する必要があることに注意してください.
ところで,(★)は本当に正しいのでしょうか?実際には,(★★)が正しいことが証明され,したがって「(★)と考えてもいい」ということがわかります.その証明はどんな教科書にも載っていますから,「微分学」の講義で習ってください.