平面での曲線と,その接線について考えてみましょう.xy平面上のすべての平面曲線を表すには,x, yをそれぞれパラメータtの関数で表す「パラメータ表示」で考える必要がありますが,ここでは簡単のためy=f(x)と表される場合のみ考えます.
曲線上のある点(x0, y0)での関数f(x)の微分係数は
(1)
と表されます.ここで,点(x, y)を(x0, y0)に近い曲線状の点と考えると,dyとはyの微少な変化すなわち(y-y0),dxとはxの微少な変化すなわち(x-x0)です.これを上の式に代入すると
(2)
となります.さて,xやyの「微少な」変化とは,どのくらい微少ならよいのでしょうか?それは,式(1)のように,「xの変化に対するyの変化の割合が定数」である程度微少であることです.これは「yの変化とxの変化が1次の関係であらわされている」ことを意味しています.そこで,(2)の関係を(x0, y0)に近くない(x, y)に延長すると,それらの(x,y)は「(x0, y0)を通り,傾きがf'(x0)の直線」,すなわち(x0, y0)での曲線y=f(x)の接線になります.
ところで,y=f(x)のかわりにF(x,y)=0で曲線を表した場合を考えてみましょう.このような表し方を陰関数表示と言います.F(x, y)=0をxで微分すると,
(3)
となり,(∂x/∂x) = 1,(∂y/∂x) = f'(x) ですから
,すなわち
(4)
となります(これを陰関数定理といいます).これを式(2)に代入すると
,すなわち
(5)
が得られます.
上と同様に,今度は3次元空間での曲面とその説明面について考えてみましょう.こちらでも簡単のために,xyz空間での曲面がz=f(x,y)で表される場合だけについて考えます.
「偏微分と全微分」(6月4日)の時に説明したように,z=f(x,y)の全微分は
(6)
で表されます.この式は,zの微少な変化dzと,xの微少な変化dxおよびyの微少な変化dyの関係を表しています.さて,ここでいう「微少な」変化とは,どのくらい微少な変化なのでしょうか?それは,zの変化が,xの変化の定数倍とyの変化の定数倍の和で表せるくらい,すなわちzの変化とxの変化・yの変化が1次の関係にあるぐらい微少な変化であることを意味しています.
さて,曲線と接線の場合と同様に,曲面上の点(x0, y0, z0)と,そこに近い点(x, y, z)を考えると,dz=z-z0,dx=x-x0,dy=y-y0ですから,点(x0, y0, z0)での全微分を考えると
(7)
が得られます.これを(x0, y0, z0)に近くない(x, y, z)にも延長すると,これは「『点(x0, y0, z0)におけるzの変化に対するxの変化・yの変化の割合』を傾きとして持ち,点(x0, y0, z0)を通る平面」すなわち点(x0, y0, z0)での接平面を表します.
z=f(x,y)を陰関数F(x,y,z)=0で表した場合も,曲線と接線の場合と同様に考えます.F(x,y,z)=0をxで微分すると
となり,(∂x/∂x) = 1,(∂y/∂x) = 0(∵xとyは独立な変数),(∂z/∂x) = fx(x,y) ですから
,すなわち
(8)
が得られます.同様にF(x,y,z)=0をyで微分することで,
(9)
が得られます.式(8),(9)を式(7)に代入すると
,すなわち
が得られます.