panoramic radiograph
歯科X線画像による多臓器診断
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骨密度が低下して骨がもろくなる骨粗鬆症が,近年問題になっています。骨粗鬆症の診断は,大腿骨の骨密度測定によるものが一般的です。しかし,自覚症状のない人がわざわざ大腿骨の骨密度測定を受診する例は少なく,そのため骨折等の大事に至るまで骨粗鬆症が発見されない,という問題があります。そこで,歯科医と整形外科医が連携し,歯科医院で撮影される顎骨のX線写真を用いて骨粗鬆症患者を発見し,整形外科医の受診を勧めることができれば,適切な骨粗鬆症の治療を大事に至る前に行うことができます。

共同研究者のひとりである松本歯科大学 田口明教授のこれまでの研究*)で,顎骨について,骨の内部の網目のようになっている細かい骨(お煎餅の内部の状態を想像していただければ分かりやすいと思います)である「骨梁」が減少したり,骨の一番外側にある「皮質骨」が薄く,また細片状になる,という症状が,骨粗鬆症と密接に関係していることがわかっています。この研究では,顎骨・歯の全体を顔の周囲から撮影するパノラマX線写真から骨梁や皮質骨を抽出し,骨梁の密度・走向分布や,皮質骨の厚み・細片化の度合等を測定します。これを使って,骨粗鬆症の診断支援や,年齢その他の要因と骨粗鬆症との関係の研究に役立てることができます。

この研究では,「パノラマX線写真」からの抽出を,とくに重視しています。パノラマX線写真撮影装置はどこの歯科医院にでもあるので,歯科医・整形外科医の連携による骨粗鬆症の早期診断に寄与することができます。また,パノラマX線写真を用いることができれば,大量のX線写真を簡単に収集することができるので,骨粗鬆症についての疫学的な調査も行えます。また,パノラマX線写真には,動脈硬化など,骨粗鬆症以外の病気の情報もあることがわかっており,これらを自動診断する研究も進めています。

*) 田口教授らの研究は,2004年の米国レントゲン学会雑誌の12月号に掲載され,事前に全世界にニュースとして配信されて,大きな反響をよびました。くわしくは,以下をごらんください。

 

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上の写真は,皮質骨の測定を示すものです。画面上で,オトガイ孔(顎骨にある,神経が通る穴)と,皮質骨上のどこか1点をクリックすると,この図でノギス状のマークで示したように皮質骨の両縁が自動的に求められ,その間隔が測定されます。

このほか,歯科放射線科医の目による診断の有効性を,世界各国の歯科放射線科医による診断結果を集計・分析して検証する研究を行っています。この研究では,私はウェブ上での画像診断支援・結果集計用ソフトの開発を担当しています。さらに,法医学への応用を目指して,X線画像からの歯の自動抽出・歯形状の自動測定の研究も行っています。

また,共同研究者の広島大学・中元崇講師,谷本啓二教授のご尽力で,この研究にもとづく骨粗鬆症オートスクリーニング支援システムを搭載した「NEOOSTEO」が,朝日レントゲン工業によって商品化されています。

 

おもな研究発表

骨粗鬆症診断(皮質骨を利用)

 
 
 

骨粗鬆症診断(骨梁を利用)

 

動脈硬化診断

 

ネットを利用した画像診断支援

 

歯形状測定

 

その他の医学関係論文